2019年01月31日

第7438号


 
■歌会始の儀

召人控 鷹羽狩行 

あらたまの空を仰げば連峰の近づきてくる語りあふがに
(以上平成30年1月18日掲載追加分)

召人控 栗木京子 

言葉には羽あり羽の根元には光のありと思ひつつ語る
(以上平成31年1月24日掲載追加分)





 
2019年1月31日 官報第7438号 




 
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2019年01月24日

第7433号 その2


 
■歌会始の儀

 1月16日午前10時30分、宮中において、歌会始の儀を行われた。
 御製、御歌、皇族の詠進歌、召人及び選者の詠進歌並びに選歌は、次のとおりである。

         光

  御   製
贈られしひまはりの種は生え揃ひ葉を広げゆく初夏の光に

  皇后宮御歌
今しばし行きなむと思う寂光に園の薔薇のみな美しく

東   宮 

雲間よりさしたる光に導かれわれ登りゆく金峰の峰に

東 宮 妃 

大君と母宮の愛でし御園生の白樺冴ゆる朝の光に

文仁親王 

山腹の洞穴深く父宮が指したる先に光苔見つ

文仁親王妃 紀   子 

日の入らむ水平線の輝きを緑閃光と知る父島の浜に

眞子内親王 

日系の百十年の歴史へて笑顔光らせ若人語る

佳子内親王 

訪れし冬のリーズの雲光り思ひ出さるるふるさとの空

正仁親王妃 華   子 

つかの間に光る稲妻さ庭辺の樹木の緑を照らしいだし来

寛仁親王妃 信   子 

被災者の苦労話を聴きにける七歳が光れる一語を放つ

彬子女王 

らふそくの光が頼りと友の言ふ北の大地を思ひ夜更けぬ

憲仁親王妃 久   子 

窓べより光のバトンの射し込みて受くるわれたのひと日始まる

承子女王 

朝光にかがやく御苑の雪景色一人と一匹足跡つづく

召 人 鷹羽狩行 

ひと雨の降りたるのちに風出でて一色に光る並木通りは

選 者 篠  弘 

手づからに刈られし陸稲の強き根を語らせたまふ眼差し光る

選 者 三枝昂之 

歳歳を歩みつづけて拓く地になほ新しき光あるべし

選 者 永田和宏 

白梅にさし添ふ光を詠みし人われのひと世を領してぞひとは

選 者 今野寿美 

ひとたびというともかげりおびてのち光さすとはいひけるものを

選 者 内藤 明 

日の光人の灯に移りゆく川沿ひの道海まで歩む

   選  歌(詠進者生年月日順)

高知県 奥宮武男 

土佐の海ぐいぐい撓ふ竿跳ねてそらに一本釣りの鰹が光る

山梨県 石原義澄 

剪定の済みし葡萄の棚ごとに樹液光りて春めぐり来ぬ

福島県 逸見征勝 

湿原に雲の切れ間は移りきて光りふくらむわたすげの絮

奈良県 荒木紀子 

大の字の交点にまづ点火され光の奔る五山送り火

栃木県 大貫春江 

分離機より光りて落ちる蜂蜜を指にからめて濃度確かむ

岡山県 秋山美恵子 

光てふ名を持つ男の人生を千年のちの生徒に語る

福岡県 瀬戸口真澄 

ぎりぎりに光落とせる会場にボストン帰りの春信を観る

岡山県 重藤洋子 

無言になり原爆資料館を出できたる生徒を夏の光に放つ

秋田県 鈴木 仁 

風光る相馬の海に高々と息を合はせて風車を組めり

山梨県 加賀爪あみ 

ペンライトの光の海に飛び込んで私は波の一つのしぶき





 
2019年1月24日 官報第7433号 




 
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2018年01月18日

第7184号 その1


 
■歌会始の儀

 1月12日午前10時30分、宮中において、歌会始の儀を行われた。
 御製、御歌、皇族の詠進歌、召人及び選者の詠進歌並びに選歌は、次のとおりである。

    語

  御   製
語りつつあしたの苑を歩み行けば林の中にきんらんの咲く

  皇后宮御歌
語るなく重きを負ひし君が肩に早春の日差し静かにそそぐ

東   宮 

復興の住宅に移りし人々の語るを聞きつつ幸を祈れり

東 宮 妃 

あたらしき住まひに入りて閖上の人ら語れる希望のうれし

文仁親王 

村人が語る話の端々に生業の知恵豊かなるを知る

文仁親王妃 紀   子 

人びとの暮らしに寄りそふ保健師らの語る言葉にわれ学びけり

眞子内親王 

パラグアイにて出会ひし日系のひとびとの語りし思ひ心に残る

正仁親王妃 華   子 

遠き日を語り給へる君の面いつしか和みほほゑみいます

寛仁親王妃 信   子 

我が君と夢で語りてなつかしきそのおもひでにほほぬれし我

彬子女王 

祖母宮の紡がれたまふ宮中の昔語りは珠匣のごとく

憲仁親王妃 久   子 

学び舎に友と集ひてそれぞれに歩みし四十年語るは楽し

承子女王 

友からの出張土産にひめゆりの塔の語り部をふと思ひ出づ

絢子女王 

気の置けぬ竹馬の友と語り合ふ理想の未来叶ふときあれ

召 人  黒井 千次 

語るべきことの数々溢れきて生きし昭和を書き泥みゐる

選 者  篠   弘 

街空に茜は冴ゆれ語らむと席立ちあがるわが身の揺らぐ

選 者  三枝 昂之 

語ることは繋ぎゆくこと満蒙といふ蜃気楼阿智村に聞く

選 者  永田 和宏 

飲かうかと言へばすなはち始まりて語りて笑ひてあの頃のわれら

選 者  今野 寿美 

歌びとは心の昔に触れたくてたそがれ色の古語いとほしむ

選 者  内藤  明 

語り了へ過ぎにし時間かへり来ぬ春の雪降る巻末の歌

   選  歌(詠進者生年月日順)

アメリカ合衆国カリフォルニア州  鈴木 敦子 

母国語の異なる子らよ母われに時にのみ込む言葉もあるを

長野県  塩沢 信子 

片言の日本語はなす娘らは坂多き町の工場を支ふ

広島県  山本 敏子 

広島のあの日を語る語り部はその日を知らぬ子らの瞳の中

福井県  川田 邦子 

突風に語尾攫はれてそれつきりあなたは何を言ひたかつたの

長崎県  増田あや子 

いつからか男は泣くなと言はれたり男よく泣く伊勢物語

東京都  川島由起子 

耳元に一語一語を置きながら父との会話またはづみゆく

神奈川県  三玉 一郎 

語らひに時々まじる雨の音ランプの宿のランプが消えて

神奈川県  浜口 直樹 

多言語の問診票を試作して聴くことの意味自らに問ふ

新潟県  南雲  翔 

通学の越後線でも二ヶ国語車内放送流れる鉄橋

長崎県  中島由優樹 

文法の尊敬丁寧謙譲語僕にはみんな同じに見える





 
2018年1月18日 官報第7184号 




 
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2017年01月19日

第6939号 その1


 
■歌会始の儀

 1月13日午前10時30分、宮中において、歌会始の儀を行われた。
 御製、御歌、皇族の詠進歌、召人及び選者の詠進歌並びに選歌は、次のとおりである。

        野

  御   製
邯鄲の鳴く音聞かむと那須の野に集ひし夜をなつかしみ思ふ

  皇后宮御歌
土筆摘み野蒜を引きてさながらに野にあるごとくここに住み来し

東   宮 

岩かげにしたたり落つる山の水大河となりて野を流れゆく

東 宮 妃 

那須の野を親子三人で歩みつつ吾子に教ふる秋の花の名

文仁親王 

山腹の野に放たれし野鶏らは新たな暮らしを求め飛び行く

文仁親王妃 紀  子 

霧の立つ野辺山のあさ高原の野菜畑に人ら勤しむ

眞子内親王 

野間馬の小さき姿愛らしく蜜柑運びし歴史を思ふ

佳子内親王 

春の野にしろつめ草を摘みながら友と作りし花の冠

正仁親王妃 華  子 

野を越えて山道のぼり見はるかす那須野ヶ原に霞たなびく

召 人 久保田淳 

葦茂る野に咲きのぼる沢桔梗冴えたる碧に今年も逢へり

選 者 篠弘 

書くためにすべての資料揃ふるが慣ひとなりしきまじめ野郎

選 者 三枝昂之 

さざなみの関東平野よみがへり水張田を風わたりゆくなり

選 者 永田和宏 

野に折りて挿されし花よ吾亦紅あの頃われの待たれてありき

選 者 今野寿美 

月夜野の工房に立ちひとの吹くびーどろはいま炎にほかならず

選 者 内藤明 

放たれて朝遥けき野を駆けるふるさと持たぬわが内の馬

選 歌(詠進者生年月日順)
岐阜県 政井繁之 

如月の日はかげりつつ吹雪く野に山中和紙の楮をさらす

東京都 上田国博 

歩みゆく秋日ゆたけき武蔵野に浅黄斑蝶の旅を見送る

長野県 小松美佐子 

宇宙より帰る人待つ広野には引力といふ地球のちから

千葉県 齋藤和子 

筆先に小さな春をひそませてふつくら画く里の野山を

東京都 平田恭信 

手術野をおほふ布地は碧み帯び無菌操作の舞台整ふ

東京都 西出和代 

父が十野菜の名前言へるまで医師はカルテを書く手とめたり

宮城県 角田正雄 

積み上げし瓦礫の丘に草むして一雨ごとに野に還りゆく

新潟県 山本英吏子 

友の手をとりてマニキュア塗る時に越後平野に降る雪静か

東京都 鴨下彩 

野原ならまつすぐ走つてゆけるのに満員電車で見つけた背中

新潟県 杉本陽香里 

夏野菜今しか出せない色がある僕には出せない茄子の紫





 
2017年1月19日 官報第6939号 




 
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2016年01月19日

第6696号


 
■歌会始の儀

 1月14日午前10時30分、宮中において、歌会始の儀を行われた。
 御製、御歌、皇族の詠進歌、召人及び選者の詠進歌並びに選歌は、次のとおりである。

     人

  御   製
戦ひにあまたの人の失せしとふ島緑にて海に横たふ

  皇后宮御歌
夕茜に入りゆく一機若き日の吾がごとく行く旅人やある

東   宮 

スペインの小さき町に響きたる人々の唄ふ復興の歌

東 宮 妃 

ふるさとの復興願ひて語りあふ若人たちのまなざしは澄む

文仁親王 

日系の人らと語り感じたり外つ国に見る郷里の心

文仁親王妃 紀子 

海わたりこのブラジルに住みし人の詩歌に託す思ひさまざま

眞子内親王 

広がりし苔の緑のやはらかく人々のこめし思ひ伝はる

佳子内親王 

若人が力を合はせ創りだす舞台の上から思ひ伝はる

正仁親王妃 華子 

人と人思はぬ出会ひに生涯の良き友となり師ともなりなむ

寛仁親王妃 信子 

東北の再会かなへし人々の笑みと涙に心やすらけく

彬子女王 

百歳をむかへたまひし祖父宮に導かれこし人生の道

憲仁親王妃 久子 

「げんきです やまこし」といふ人文字を作りし人ら健やかであれ

承子女王 

鳥たちの声に重なる原宿の人の気配と日暮の合図

絢子女王 

出雲路へ集ひし人の願ひ事緑の行方は神のみが知る

召人 尾崎左永子 

駅出でて交差路わたる人の群あたたかき冬の朝の香放つ

選者 篠弘 

集団をたえず動かしつづけきてことば穏しき人となりくる

選者 三枝昂之 

一対の脚が踏ん張る大地あり季節違はず種を蒔く人

選者 永田和宏 

二人ゐて楽しい筈の人生の筈がわたしを置いて去りにき

選者 今野寿美 

いにしへのおほいにしへの大人たちもほほづゑに月見る夜ありけむ

選者 内藤明 

指の跡しるく残れる篠笛を吹きて遙けき人呼ぶごとし

   選 歌(詠進者生年月日順)
福島県 菊池イネ 

休憩所の日向に手袋干しならべ除染の人たしばし昼寝す

宮城県 柴田和子 

野の萩をコップに挿して病棟に人ら坐れば月は昇りぬ

長野県 木内かず子 

橅植ゑて百年待つといふ人の百年間は楽しと思へり

長崎県 渡部誠一郎 

人知れず献体手続してをりぬ伯母を見送るくんちの街に

大分県 佐藤政俊 

二手にと人は分かれて放牧の阿蘇の草原に野火を走らす

神奈川県 内田しず江 

彼等とのつきあひ方と人のごとく語られてゐる人工知能

香川県 大林しずの 

かぎろひの春の手習ひ人の字は左右にゆつくりはらつてごらん

埼玉県 中込有美 

一人でも平気と吾子が駆けてゆき金木犀は香りはじめる

東京都 高橋千恵 

雨上がり人差し指で穴をあけ春の地球に種を蒔きたり

新潟県 内山遼太 

日焼けした背中の色がさめる頃友達四人の距離変化する





 
2016年1月19日 官報第6696号 




 
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2015年01月19日

第6453号 その3


 
■歌会始の儀

 1月14日午前10時30分、宮中において、歌会始の儀を行われた。
 御製、御歌、皇族の詠進歌、召人及び選者の詠進歌並びに選歌は、次のとおりである。

       本
  御   製
夕やみせまる田に入り稔りたる稲の根本に鎌をあてがふ

  皇后宮御歌
来し方に本と文の林ありてその下陰に幾度いこひし

東   宮 

山あひの紅葉深まる学び舎に本読み聞かす声はさやけし

東 宮 妃 

恩師より贈られし本ひもとけは若き学びの日々のなつかし

文仁親王 

年久しく風月の移ろひ見続けし一本の巨樹に思ひ巡らす

文仁親王妃 紀   子 

日系の若人からりぬ日本へのあつき思ひと移民の暮らしを

眞子内親王 

呼びかける声に気づかず一心に本を読みたる幼きわか日

佳子内親王 

弟に本読み聞かせゐたる夜は旅する母を思ひてねむる

正仁親王妃 華   子 

新しき本の頁をめくりつついづく迄読まむと時は過ぎゆく

寛仁親王妃 信   子 

松山に集ひし多くの若人の抱へる本は夢のあかしへ

彬子女王 

数多ある考古学の本に囲まれて積み重なりし年月思ふ

憲仁親王妃 久   子 

来客の知らせ来たりてゆつくりと読みさしの本に栞入れたり

承子女王 

霧立ちて紅葉の燃ゆる大池に鳥の音響く日本の秋は

召人 春日真木子 

緑陰に本を繰りつつわが呼吸と幸くあひあふ万の言の葉

選者 篠弘 

送られし古本市のカタログに一冊を選るが慣ひとなりぬ

選者 三枝昴之 

音読の声が生まれる一限目明日へ遠くへ本がいざなふ

選者 永田和宏 

本棚の一段分にをさまりし一生の量をかなしみにけり

選者 今野寿美 

秋の気の音なく満ちて指先に起こしては繰る本こそが本

選者 内藤明 

開かれて卓上にある一冊の本を囲みて夕餉のごとし


   選歌(詠進者生年月日順)

奈良県 伊藤嘉啓 

若き日に和本漁りぬ京の町目方で買ひし春の店先

新潟県 吉樂正雄 

おさがりの本を持つ子はもたぬ子に見せて戦後の授業はじまる

愛知県 森明美 

竹垣の露地に仕立てた数本の太藺ゆらして風わたりけり

長野県 木下瑜美子 

大雪に片寄せ片寄せ一本の道を開けたり世と繋がりぬ

千葉県 平井敬子 

「あったよねこの本うちに」流れた家の子が言ふ移動図書館

埼玉県 森中香織 

本棚に百科事典の揃ひし日に父の戦後は不意に終はりぬ

茨城県 五十嵐裕治 

二人して荷解き終へた新居には同じ二冊が並ぶ本棚

神奈川県 古川文良 

雉さんのあたりで遠のく母の声いつも渡れぬ鬼のすむ島

岡山県 中川真望子 

暑い夏坂を下ればあの本のあの子みたいに君はゐるのか

神奈川県 小林理央 

この本に全てがつまつてるわけぢやないだから私が続きを生きる





 
2015年1月19日 官報第6453号 




 
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2014年01月17日

第6210号


 
■歌会始の儀

 1月15日午前10時30分、宮中において、歌会始の儀を行われた。
 御製、御歌、皇族の詠進歌、召人及び選者の詠進歌並びに選歌は、次のとおりである。

    静

  御   製
慰霊碑の先に広がる水俣の海青くして静かなりけり

  皇后宮御歌
み遷りの近き宮居に仕ふると瞳静かに娘は行ひて発


東   宮 

御社の静けき中に聞え来る歌声ゆかし新嘗の祭

東 宮 妃 

悲しみも包みこむごと釜石の海は静かに水たたへたり

文仁親王 

数多なる人ら集ひし遷御の儀静けさの中に御列は進む

文仁親王妃 紀   子 

いくつものボビンを子らは繰りながら静かにイドリアレースを編めり

眞子内親王 

新雪の降りし英国の朝の道静けさ響くごとくありけり

正仁親王妃 華   子 

秋祭君の挨拶を聞かむとし子供神輿の子らは静らむ

崇仁親王妃 百 合 子 

思ひきや白寿の君と共にありてかくも静けき日々送るとは

寛仁親王妃 信   子 

わが君と過ごせし日々を想ひつつ静かにながるるときありがたき

彬子女王 

夏の夜に子らと集ひし大社静寂の中に鈴の音聞きぬ

憲仁親王妃 久   子 

燈籠のあかりともれる回廊を心静かに我すすみゆく

承子女王 

静けさをやぶる神社の鳥の声日の落ちてよりいづる三日月

典子女王 

かすみゆく草原に立ち眺むればいとど身に沁む静けさのあり

召  人 芳賀 徹 

子も孫もきそひのぼりし泰山木暮れゆく空に静もりて咲く

選  者 岡井 隆 

朝霧のながるるかなた静かなる邦あるらしも行きて住むべく

選  者 篠  弘 

一瞬の静もりありて夕駅へエスカレータは下りに変はる

選  者 三枝昂之 

から松の針が零れる並木道みんな静かな暮らしであつた

選  者 永田和宏 

歳月はその輪郭をあはくする静かに人は笑みてゐるとも

選  者 内藤 明 

手に載せて穴より覗く瓢箪の静けき界に心はあそぶ

     選  歌(詠進者生年月日順)
愛知県 伊藤正彦 

いなづまのまたひらめきし静かなる窓ひとつあり夜とひとりあり

山口県 中西輝磨 

目の生れし魚の卵をレンズもて見守る実験室の静けさ

徳島県 藤本和代 

おほいなる愛のこもれる腎ひとつ静かに収まる弟の身に

北海道 佐藤眞理子 

プレートよ静かにしづかに今しがた生まれたひとりが乗らうとしてゐる

群馬県 山口啓子 

ひとり住む母の暮しの静かなり父のセーター今日も着てをり

大阪府 前田直美 

嫁ぐ日の朝に母は賑やかに父は静かに食卓囲む

福島県 冨塚真紀子 

吾の名をきみが小さく呼捨てて静かに胸は揺らいでしまふ

東京都 樋口盛一 

静けさを大事にできる君となら何でもできる気がした真夏

東京都 中島梨那 

二人分焼いてしまつた食パンと静かな朝の濃いコロンビア

新潟県 加藤光一 

続かない話題と話題のすきまには君との距離が静かにあつた






2014年1月17日 官報第6210号 




 
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2013年01月18日

第5967号 その3


 

■歌会始の儀

 1月16日午前10時30分、宮中において、歌会始の儀を行われた。
 御製、御歌、皇族の詠進歌、召人及び選者の詠進歌並びに選歌は、次のとおりである。

  御   製
万座毛に昔をしのび巡り行けば彼方恩納岳さやに立ちたり

  皇后宮御歌
天地にきざし来たれるものありて君が春野に立たす日近し

東   宮 

幾人の巣立てる子らを見守りし大公孫樹の木は学び舎に立つ

東 宮 妃 

十一年吾子の生れたる師走の夜立待ち月はあかく照りたり

文仁親王 

立山にて姿を見たる雷鳥の穏やかな様に心和めり

文仁親王妃 紀 子 

凛として立つ園児らの歌ごゑは冬日の部屋にあかるくひびく

正仁親王妃 華 子 

蕗のたう竹籠もちて摘みゆけばわが手の平に香り立ちきぬ

崇仁親王妃 百合子 

俄かにも雲立ち渡る山なみのをちに光れりつよき稲妻

憲仁親王妃 久 子 

冬晴れの雲なき空にそびえ立つ雪の大山いともさやけき

承子女王 

立ちどまり募金箱へと背伸びする小さな君の大きな気持

典子女王 

庭すみにひそやかに立つ寒椿朝のひかりに花の色濃く

絢子女王 

冴えわたる冬晴れの朝畦道にきらきら光る霜柱立つ

召人 岡野弘彦 

伊勢の宮み代のさかえと立たすなり岩根にとどく心のみ柱

選者 岡井 隆 

やうやくに行方見え来てためらひの泥よりわれは立ち上がりたり

選者 篠  弘 

ゆだぬれば事決まりゆく先見えて次の会議へ席立たむとす

選者 三枝昂之 

すずかけは冬の木立に還りたりまた新しき空を抱くため

選者 永田和宏 

百年ばかり寝すごしちまつた頚を立て亀は春陽に薄き眸を開く

選者 内藤 明 

遠き日の雨と光を身に堪へ銀杏大樹はビルの間に立つ

選歌(詠進者生年月日順)

北海道 佐藤マサ子 

羽搏きて白鳥の群れとび立てり呼び合ふ声を空にひろげて

埼玉県 若谷政夫 

ほの白く慈姑の花の匂ふ朝明日刈る稻の畦に立ちをり

静岡県 青木信一 

自画像はいまだに未完立て掛けたイーゼル越しの窓が春めく

新潟県 宮澤房良 

何度目の雪下しかと訊ねられ息をととのへ降る雪に立つ

群馬県 鬼形輝雄 

いつせいに蚕は赤き頭立て糸吐く刻をひたすらに待つ

新潟県 高橋健治 

吹く風に向へば力得るやうな竜飛岬の海風に立つ

福島県 金澤憲仁 

安達太良の馬の背に立ちはつ秋の空の青さをふかく吸ひ込む

栃木県 川俣茉紀 

ネクタイをゆるめず走る君の背を立ち止まらずに追ひかけるから

大阪府 瀬利由貴乃 

人々が同じ時間に立ち止まり空を見上げた金環日食

東京都 太田一毅 

実は僕家でカエルを飼つてゐる夕立来るも鳴かないカエル





 
2013年1月18日 官報第5967号 




 
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2011年01月18日

第5476号 その2


 
■歌会始の儀

 1月14日午前10時30分、宮中において、歌会始の儀を行われた。
 御製、御歌、皇族の詠進歌、召人及び選者の詠進歌並びに選歌は、次のとおりである。
        葉
  御製
五十年の祝ひの年に共に蒔きし白樺の葉に暑き日の射す

  皇后宮御歌
おほかたの枯葉は枝に残りつつ今日まんさくの花ひとつ咲く


東宮 

紅葉する深山に入りてたたずめば木々の葉ゆらす風の音聞こゆ

東宮妃 

吹く風に舞ふいちやうの葉秋の日を表に裏に浴びてかがやく

文仁親王 

山峡に直ぐに立ちたる青松の嫋やかなる葉に清けさ覚ゆ

文仁親王妃 紀子 

天蚕はまてばしひの葉につつまれてうすき緑の繭をつむげり

正仁親王 

中庭のにしきぎの葉は赤々と朝の光に燃えるがごとし

正仁親王妃 華子 

新年のおせち料理にそへてもる南天の葉はひきたちてみゆ

崇仁親王妃 百合子 

ほどけしも巻葉もありて今年竹みどりさやかにゆれやまぬかな

彬子女王 

手に取りし青きさかき葉眼にしみて我が学び舎に想ひはせたり

憲仁親王妃 久子 

新年にめでたく飾る楪の葉に若きらの夢たくしたり

承子女王 

葉脈のしをり見つけし古き本思ひではめぐる初等科時代に

典子女王 

雲のなき冬空さえて行く人の落ち葉ふむ音さやかに聞こゆ

絢子女王 

風吹きてはらはらと舞ふ落葉手に母への土産と喜ぶをさな

召人 安永蕗子 

山茶花の白を愛した母思へば葉と葉のあひのつぼみ豊けし

選者 岡井隆 

銀杏落葉ふかくつもれる坂道をのぼりて行かな明日の日のため

選者 篠弘 

白樺の若葉をぬらす昼しぐれ書き出さむわがことば立ちくる

選者 三枝昂之 

哀楽の年々を積みあゆみゆく銀杏並木の今年の黄葉

選者 永田和宏 

青葉木莵が鳴いてゐるよと告げたきに告げて応ふる人はあらずも

     選歌(詠進者生年月日順)

鳥取県 森本由子 

夕凪ぎを柿の若葉に確かめて灰七十キロ無事に撒き終ふ
兵庫県 井上正一 

電源を入れよと妻に声かけてわさびの苗葉に液肥を放つ
山口県 岡本義明 

草の葉の切れ端のこるシャワー室妻は夏日の草を刈りしか
カナダ国ブリティッシュコロンビア州 粟津三壽 

妻の里丹波の村の山椿カナダに生ひて葉をひろげゆく
茨城県 丹波陽子 

一字一字指しつつ読みぬ木簡の万葉仮名の「皮留久佐乃皮斯米」
東京都 吉竹純 

背丈より百葉箱の高きころ四季は静かに人と巡りき
東京都 上田真司 

ささやかな悲しみあれば水底に木の葉が届くまで待ちゐたり
京都府 桑原亮子 

霜ひかる朴葉拾ひて見渡せば散りしものらへ陽の差す時刻
静岡県 中村玖見 

駐輪場かごに紅葉をつけてゐるきみの隣に止める自転車
兵庫県 大西春花 

「大丈夫」この言葉だけ言ふ君の不安を最初に気づいてあげたい





 
2011年1月18日 官報第5476号 




 
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2010年01月18日

第5233号 その2


 
■歌会始の儀

 1月14日午前10時30分、宮中において、歌会始の儀を行われた。
 御製、御歌、皇族の詠進歌、召人及び選者の詠進歌並びに選歌は、次のとおりである。

      光

  御製
木漏れ日の光を受けて落ち葉敷く小道の真中草青みたり

  皇后宮御歌
君とゆく道の果たての遠白く夕暮れてなほ光あるらし

       東宮
雲の上に太陽の光はいできたり富士の山はだ赤く照らせり
       東宮妃
池の面に立つさざ波は冬の日の光を受けて明かくきらめく
       文仁親王
イグアスのホタルは数多光りつつ散り交ふ影は星の如くに
       文仁親王妃 紀子
早春の光さやけく木々の間に咲きそめにけるかたかごの花
       正仁親王
父君に夜露の中をみ供してみ園生を行けば蛍光りぬ
       正仁親王妃 華子
大記録なししイチローのその知らせ希望の光を子らにあたへむ
       崇仁親王妃 百合子
雪はれし富良野の宿の朝の窓ダイヤモンドダストのきらめき光る
       憲仁親王妃 久子
北極の空に色づくオーロラの光の舞ふを背の宮と見し
       承子女王
黄金に光り輝く並木道笑顔の友の吐く息白く
       典子女王
葉の上にぽつりと残る雨粒に雲間より差す光ひとすぢ
       召人 武川忠一
夕空に赤き光をたもちつつ雲ゆつくりと廣がりてゆく
       選者 岡井隆
光あればかならず影の寄りそふを肯ひながら老いゆくわれは
       選者 篠弘
金箔の光る背文字に声掛けて朝の書斎へはひりきたりつ
       選者 三枝昴之
あたらしき一歩をわれに促して山河は春へ光をふくむ
       選者 河野裕子
白梅に光さし添ひすぎゆきし歳月の中にも咲ける白梅
       選者 永田和宏
ゆつくりと風に光をまぜながら岬の端に風車はまはる

       選歌(詠進者生年月日順)
        東京都 古川信行
燈台の光見ゆとの報告に一際高し了解の聲
        静岡県 小川健二
選果機のベルトに乗りし我がみかん光センサーが糖度を示す
        群馬県 笛木力三郎
冬晴れの谷川岳の耳二つ虚空に白き光をはなつ
        北海道 西出欣司
前照灯の光のなかに雪の降り始発列車は我が合図待つ
        兵庫県 玉川朱美
梅雨晴れの光くまなくそそぐ田に五指深く入れ地温はかれり
        長野県 久保田幸枝
焼きつくす光の記憶の消ゆる日のあれよとおもひあるなと思ふ
        大阪府 森脇洲子
我が面は光に向きてゐるらしき近づきて息子はシャッターを押す
        東京都 野上卓
あをあをとしたたる光三輪山に満ちて世界は夏とよばれる
        福岡県 松枝哲哉
藍甕に浸して絞るわたの糸光にかざすとき匂ひ立つ
        京都府 後藤正樹
雲間より光射しくる中空へ百畳大凧揚がり鎮まる





 
2010年1月18日 官報第5233号 




 
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2009年01月19日

第4992号 その2

 
■歌会始の儀

 1月15日午前10時30分、宮中において、歌会始の儀を行われた。
 御製、御歌、皇族の詠進歌、召人及び選者の詠進歌並びに選歌は、次のとおりである。

        生

  御製
生きものの織りなして生くる様見つつ皇居に住みて十五年経ぬ

  皇后宮御歌
生命あるもののかなしさ早春の光のなかに揺すり蚊の舞ふ

       東宮
水もなきアラビアの砂漠に生え出でし草花の生命たくましきかな

       東宮妃
制服のあかきネクタイ旨にとめ一年生に吾子はなりたり

       文仁親王
大空に放たれし朱鷺新たなる生活求めて野へと飛びゆく

       文仁親王妃 紀子
地震(なゐ)うけし地域の人らの支へあひ生きる姿に励まされたり

       正仁親王
あかとんぼ生受けし池に戻り来ぬ木々もみぢする秋晴れの日に

       正仁親王妃 華子
生命とは人の道なりと医師はいふ触診をする眼(まなこ)きびしく

       崇仁親王妃 百合子
生かされしいのち畏みかりの世を八十年あまりはるけくも来し

       憲仁親王妃 久子
うつし絵の君が微笑みにささへられみ心継ぎて生きむとぞ思ふ

       承子女王
わが生(あ)れし街に見知らぬビル建ちて帰り来しわれの少しとまどふ

       典子女王
地に生ふるたんぽぽ見遣る幼子の笑顔を見ては我も微笑む

       召人 谷川健一
陽に染まる飛魚の羽きらきらし海中(わたなか)に春の潮生れて

       選者 岡井 隆
野の草の騒立ちやまぬたましひも我が生きてある証とおもふ

       選者 篠  弘
われよりも生き長らへむ古書店にわが若書きの小著が並ぶ

       選者 三枝昂之
この丘に生きるものみないとほしく木の実がこぼれ茶の花が咲く

       選者 河野裕子
母がまだ生きゐし頃のこゑがする日向に出でてはいと振りむく

       選者 永田和宏
生きてあるわが身の冷えはゆふぐれの柿の古木の火(ほ)めきに凭(もた)る


    選歌(詠進者生年月日順)
       青森県 中村正行
ほのぐらき倉庫の隅に生きつづく古古米二百俵の穀温はかる

       東京都 亀岡純一
「麦の種子蒔き終へたり」と日記書く今日を生きたる今日の一行

       山形県 木村克子
梅雨晴れて校舎の窓の開くが見ゆ一年生は椅子に慣れしや

       栃木県 阿久津照子
角膜は賜はりしもの今日よりはふたつの生を生きむと思ふ

       ブラジル国サンタカリーナ州
       筒井 惇
エタノール生産工場中にして甘藷畑の四方に延びゆく

       神奈川県 水口伸生
竹筒にらうそく灯り大地震(おほなゐ)の生者と死者は共に集へり

       埼玉県 菅野耕平
大空に春の余白を生みながら雲のひとつとなる飛行船

       千葉県 出口由美
生命とはあたたかきもの採血のガラスはかすかにくもりを帯びぬ

       千葉県 丸山翔平
夕凪のなか走り出す僕が生む向かひ風受けまた加速する

       福岡県 北川 光
熱線の人がたの影くつきりと生きてる僕の影だけ動く





2009年1月19日 官報第4992号 




 

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