2009年01月19日

第4992号 その2

 
■歌会始の儀

 1月15日午前10時30分、宮中において、歌会始の儀を行われた。
 御製、御歌、皇族の詠進歌、召人及び選者の詠進歌並びに選歌は、次のとおりである。

        生

  御製
生きものの織りなして生くる様見つつ皇居に住みて十五年経ぬ

  皇后宮御歌
生命あるもののかなしさ早春の光のなかに揺すり蚊の舞ふ

       東宮
水もなきアラビアの砂漠に生え出でし草花の生命たくましきかな

       東宮妃
制服のあかきネクタイ旨にとめ一年生に吾子はなりたり

       文仁親王
大空に放たれし朱鷺新たなる生活求めて野へと飛びゆく

       文仁親王妃 紀子
地震(なゐ)うけし地域の人らの支へあひ生きる姿に励まされたり

       正仁親王
あかとんぼ生受けし池に戻り来ぬ木々もみぢする秋晴れの日に

       正仁親王妃 華子
生命とは人の道なりと医師はいふ触診をする眼(まなこ)きびしく

       崇仁親王妃 百合子
生かされしいのち畏みかりの世を八十年あまりはるけくも来し

       憲仁親王妃 久子
うつし絵の君が微笑みにささへられみ心継ぎて生きむとぞ思ふ

       承子女王
わが生(あ)れし街に見知らぬビル建ちて帰り来しわれの少しとまどふ

       典子女王
地に生ふるたんぽぽ見遣る幼子の笑顔を見ては我も微笑む

       召人 谷川健一
陽に染まる飛魚の羽きらきらし海中(わたなか)に春の潮生れて

       選者 岡井 隆
野の草の騒立ちやまぬたましひも我が生きてある証とおもふ

       選者 篠  弘
われよりも生き長らへむ古書店にわが若書きの小著が並ぶ

       選者 三枝昂之
この丘に生きるものみないとほしく木の実がこぼれ茶の花が咲く

       選者 河野裕子
母がまだ生きゐし頃のこゑがする日向に出でてはいと振りむく

       選者 永田和宏
生きてあるわが身の冷えはゆふぐれの柿の古木の火(ほ)めきに凭(もた)る


    選歌(詠進者生年月日順)
       青森県 中村正行
ほのぐらき倉庫の隅に生きつづく古古米二百俵の穀温はかる

       東京都 亀岡純一
「麦の種子蒔き終へたり」と日記書く今日を生きたる今日の一行

       山形県 木村克子
梅雨晴れて校舎の窓の開くが見ゆ一年生は椅子に慣れしや

       栃木県 阿久津照子
角膜は賜はりしもの今日よりはふたつの生を生きむと思ふ

       ブラジル国サンタカリーナ州
       筒井 惇
エタノール生産工場中にして甘藷畑の四方に延びゆく

       神奈川県 水口伸生
竹筒にらうそく灯り大地震(おほなゐ)の生者と死者は共に集へり

       埼玉県 菅野耕平
大空に春の余白を生みながら雲のひとつとなる飛行船

       千葉県 出口由美
生命とはあたたかきもの採血のガラスはかすかにくもりを帯びぬ

       千葉県 丸山翔平
夕凪のなか走り出す僕が生む向かひ風受けまた加速する

       福岡県 北川 光
熱線の人がたの影くつきりと生きてる僕の影だけ動く





2009年1月19日 官報第4992号 




 

posted by へむ at 17:24| 歌会始の儀 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする