■歌会始の儀
1月16日午前10時30分、宮中において、歌会始の儀を行われた。
御製、御歌、皇族の詠進歌、召人及び選者の詠進歌並びに選歌は、次のとおりである。
光
御 製
贈られしひまはりの種は生え揃ひ葉を広げゆく初夏の光に
皇后宮御歌
今しばし行きなむと思う寂光に園の薔薇のみな美しく
東 宮
雲間よりさしたる光に導かれわれ登りゆく金峰の峰に
東 宮 妃
大君と母宮の愛でし御園生の白樺冴ゆる朝の光に
文仁親王
山腹の洞穴深く父宮が指したる先に光苔見つ
文仁親王妃 紀 子
日の入らむ水平線の輝きを緑閃光と知る父島の浜に
眞子内親王
日系の百十年の歴史へて笑顔光らせ若人語る
佳子内親王
訪れし冬のリーズの雲光り思ひ出さるるふるさとの空
正仁親王妃 華 子
つかの間に光る稲妻さ庭辺の樹木の緑を照らしいだし来
寛仁親王妃 信 子
被災者の苦労話を聴きにける七歳が光れる一語を放つ
彬子女王
らふそくの光が頼りと友の言ふ北の大地を思ひ夜更けぬ
憲仁親王妃 久 子
窓べより光のバトンの射し込みて受くるわれたのひと日始まる
承子女王
朝光にかがやく御苑の雪景色一人と一匹足跡つづく
召 人 鷹羽狩行
ひと雨の降りたるのちに風出でて一色に光る並木通りは
選 者 篠 弘
手づからに刈られし陸稲の強き根を語らせたまふ眼差し光る
選 者 三枝昂之
歳歳を歩みつづけて拓く地になほ新しき光あるべし
選 者 永田和宏
白梅にさし添ふ光を詠みし人われのひと世を領してぞひとは
選 者 今野寿美
ひとたびというともかげりおびてのち光さすとはいひけるものを
選 者 内藤 明
日の光人の灯に移りゆく川沿ひの道海まで歩む
選 歌(詠進者生年月日順)
高知県 奥宮武男
土佐の海ぐいぐい撓ふ竿跳ねてそらに一本釣りの鰹が光る
山梨県 石原義澄
剪定の済みし葡萄の棚ごとに樹液光りて春めぐり来ぬ
福島県 逸見征勝
湿原に雲の切れ間は移りきて光りふくらむわたすげの絮
奈良県 荒木紀子
大の字の交点にまづ点火され光の奔る五山送り火
栃木県 大貫春江
分離機より光りて落ちる蜂蜜を指にからめて濃度確かむ
岡山県 秋山美恵子
光てふ名を持つ男の人生を千年のちの生徒に語る
福岡県 瀬戸口真澄
ぎりぎりに光落とせる会場にボストン帰りの春信を観る
岡山県 重藤洋子
無言になり原爆資料館を出できたる生徒を夏の光に放つ
秋田県 鈴木 仁
風光る相馬の海に高々と息を合はせて風車を組めり
山梨県 加賀爪あみ
ペンライトの光の海に飛び込んで私は波の一つのしぶき
2019年1月24日 官報第7433号